手打ちそば
蕎麦は、お米の栽培が難しかった山間地で貴重な食料として歴史を重ねてきました。そば粉は、そばの種類や挽き方などによって色々な種類があり、この地方など山間部では蕎麦の実全部を粉にしたものを(挽きぐるみ*)使用してきました。
蕎麦のつなぎには、小麦粉、山芋、ヤマゴボウの葉の繊維を乾燥させたものなどを使用します。雪深い地方ですが、戦中前後の食糧難の時代は麦を栽培していた農家もあったので、自給自足の時代にも小麦粉は調達できたのでしょう。
(*挽きぐるみ;そば殻ごと挽いたもの。現在は、殻を除いた実を挽いたものも挽きぐるみとよぶ)
材料
▼二八そば(4人前)
- そば粉
- 60g
- 強力粉
- 20g
- 水または熱湯
- 225ccくらい
▼山芋つなぎ
- そば粉
- 500g
- 山芋(自然薯やヤマノイモなど。すりおろしたもの)
- 200g
- 卵
- 2個
- 水または熱湯
- 40ccくらい
▼ヤマゴボウつなぎ
- そば粉
- 500g
- ヤマゴボウの葉の繊維5gを煮た熱湯
- 100cc
- 水または熱湯
- 125ccくらい
道具や素材のアドバイス
打ち粉は、でんぷん質が高い「端粉(はしこ)」と呼ばれる粉がのしの作業がしやすくおすすめです。そば粉も打ち粉も市内で入手できます。ヤマゴボウの葉の繊維を干したものは入手困難ですが、本格的にチャレンジしたい方はご相談ください。
作りかた
二八そば
- そば粉がふるってない場合は、50~70番のふるいでふるう。(番手が細かいほど出来上がりの舌触りがよくなる。ふるいかすは蕎麦がきに利用する)強力粉も同様にふるいにかける。
- 1.の粉を計量しボールなどの中でよく混ぜる。
- 2.の粉の中央に窪みを作り、分量の9割程度の水か熱湯を注ぎ、10本の指先を全部を使いながら手早く粉全体に いきわたるように混ぜる。
- 3.で出来たものを二等分し、片方を団子状にまとめてみる。このときに子供用の粘土程度の固さを基準として硬い場合には残ったもう半分に水または熱湯を足し水分を調整する。(この段階では霧吹きを利用すると作業しやすい。同じ材料を使っていれば水分量はだんだんと把握できくる)
- 最後に全体をひとつにまとめ、つややかになり弾力を持ってくれば「ノシ」の作業(↓)に入る。
山芋つなぎ
- そば粉を用意する。(二八そば同様)
- 下ろし金で山芋を下ろしたところに、玉子を入れ泡立て器などでよく混ぜ、そば粉全体に揉み込むように混ぜる。(このあと二八そばの4.の作り方と同じ)
ヤマゴボウつなぎ
- そば粉を用意する。(二八そば同様)
- ヤマゴボウの葉の繊維を煮溶かした熱湯を粉全体にいきわたらせる。(このあと二八そばの4.の作り方と同じ)
「ノシ」の作業
- そば玉の表面のしわを中央に集めながら厚めの鏡餅のような形にする。
- しわを下にしてうち板に打ち粉をひき1のそば玉を手の平で均等に丸く薄くしていく。
- 直径30センチ程度になったら、生地の手前から均等な間隔でのし棒を上から押しつけていく。 これを生地を60度くらい回転させながら繰り返す。
- のし棒で押し付けるのが限界になったら、生地をのし棒に巻きつけて転がし生地をのしていく。 このときもこまめに生地をのし棒からはなし、回転させ、また巻きつけてのしていく。打ち粉を切らせないようにしないとのし板やのし棒にくっつく。
- 厚さが1ミリ以下になったら(直径90センチ程度)打ち粉をまんべんなく振り二つにたたむ。たたんだ新しい面には必ず打ち粉を振りながら切りやすい幅までたたんでいき、一番表面と生地の下にも打ち粉をひき包丁で切る。
知恵袋
痩せた土地でも育ち手間のかからない蕎麦は山間地域の「かて飯(米の代用食)」としての歴史を持ちますが、昨今のブームにのって洗練された料理としての側面も持ってきました。玉子を生めなくなった鶏を醤油仕立ての汁にして蕎麦つゆとするのが特徴です。
つなぎの山芋は、「ヤマノイモ」という種類のものが粘りも強く蕎麦の風味を消さないため使いやすいです。
こね鉢は大き目のボール、のし板はコタツ板、包丁は菜切り包丁で十分です。のし棒だけは必要ですが、太いものは生地にやさしく力が伝わるので最初は使いやすく、細いものは仕事の効率はいいですが集中的に力がかかるので生地がくっついたりする原因になりやすいです。
水は、熱湯のほうがそばをつなげる「グルテン」という成分の特徴を引き出しやすいです。水のほうがそばの風味が失われないともいいますが、とりあえずそばの形にならないと食べれません。
- 2005年1月編集 (レシピ、作り方他)協力;除戸の峯ちゃん